古墳のある公園に朝ひとりで散歩に行く

 ほぼ毎朝いっしょに散歩に行っていた犬友だちは体調を崩しているので今朝はひとりで散歩に行った。
 白い犬がさまよっていた古墳のある公園へ。
 白い犬は犬を二匹飼っている愛犬家に保護された。保護したのは公園ではなく多摩川のもう少し川下にある学校の近くらしい。愛犬家は放浪が始まったころから白い犬のことが気になりずっと追いかけていた。時間をかけて犬の警戒心をとき顔見知りになれるように犬に接した。昨日も追いかけていたが白い犬のほうから愛犬家に近づいてきてそのそばでくつろぎ、いつのまにか眠った。そのときつかまえることができたそうだ。いまはその方の家に落ち着き、長い放浪生活に疲れたのかすやすやと眠っているとか。動物病院で血液検査を受けたがフィラリアの感染もなく、肝臓、腎臓などの数値も問題なかった。推定年齢は2歳。やはり若さがあるから放浪生活を乗り切ることができたのだろうか。わが老犬ももこのことを考え、せつなくなった。
 この方はもう一匹飼うのは無理なので白い犬の新しい飼い主さんが見つかるまで家で責任をもって預かってくださるそうだ。
 新緑の公園は白い犬がいなくなったからだろうか。わたしには寂しく思えた。寂しさを埋め合わすように樹々の若葉はいっそう濃くなった。一回しか会っていない(というより見ていない)犬だが幸せになることを祈りたい。幸せになると信じている。

 白犬の放浪はひと月にわたる保護をめざすが逃げ続けたり

 赤き首輪の白き犬飼い主に捨てられたのか街をさまよふ

 古墳山に座りたる白犬にえさを差し出せど近づいて来づ

 犬連れの女(をみな)に白き犬近づくが連れの犬吠へれば離れる

 古墳の山さまよふ犬が保護されし翌朝の若葉色濃くなりぬ

 愛犬を死なせしわれを支へくれる友のとつぜんの病を案づ

人住まぬ庭の藤のつる高き樹をのぼりつめツリーのさまに咲く

 朝夕で葉の大きさが変わりたり卯月の庭は青春前期

 気がつけば花水木咲けり枝ひろげ飛べない哀しみにふるへをり