白い沈丁花の絵を描く

 朝から雲が出ていた。天気予報によると最高気温は朝方がいちばん高く日中はだんだん下がっていくそうだ。
 お昼を過ぎた頃から雨が降り始め、気温がぐんと下がった。
 昨日までの暖かさで庭の梅や椿が咲き進み、昨年より花数が多いのが悲しみを誘う。老犬ももこはこの家に1年と五ヶ月あまりしかいなかったがなんで花がいちばんきれいなときにいなかったのだろう。ももこがいた昨年の春は、梅も椿もそれほど豪華に咲かなかった。椿は前年の花後に思い切って強く剪定したからにちがいない。梅の木の花数が少なかったのは前年の11月頃植木屋が剪定したためかもしれない。
 そうはいっても昨年もたくさんの花がももこがいた春に咲いたのだが、ももこがいなくなってみると今年のこの花をいっしょに楽しみたかったと切に思う。もっときれいに咲いたよ、なんでももこはいないの?と。
 お昼前から、家の中で飾っている花を描き始めた。 
 テーブルの上に生け花に使った小枝や椿のつぼみ、折れてしまった紫陽花の新芽などをグラスに入れて飾っている。
 その中に玄関を出たすぐのところで咲いている白花の沈丁花を加えて絵を描いた。
 葉っぱの緑と沈丁花の白い花、椿のつぼみの淡紅色という色彩的に少し寂しいが、緑と白はわたしが好きな配色で難しいのは知っているが描きたくなるのである。
 葉っぱの緑の描きわけはむずかしい。もう少し沈丁花の葉っぱを濃くした方がいいかもしれない。


 今日の歌を少し。

 暗闇に消へし写真の顔はまなうらにうつり眠りに入る

 バス停に黒き傘持つ女をりてけふはこれから雨が降るらし

 鵯は梅の木に軽鴨は川に朝餉に余念なき弥生はじめ

 白木蓮のつぼみに似る腹みせて四十雀がなにやらついばむ

 咲きそめのベニバナトキワマンサクよ5年前は滝のごと美し

 わが食事のあと食べこぼしを狙ひし老犬ももこ言いだして言えず
 
 こころの内の犬を誘ひ近くの寺に日課の墓参せり春浅きに