クロモジ、ストック、透百合を活ける

 朝方は小雨がぱらつき、お昼頃から雨の降りが強くなった。夕方近くになり霙に変わり、いっそう寒くなった。
 お昼過ぎから近く生け花のお稽古があるのででかけた。先生も生徒も高齢者だがなんとか集まった。ただ、ひとりだけ今日が生け花のお稽古があることを忘れ、来ない人がいた。先生がその人に電話をかけ少し遅れてやってきた。
 昨年の終わりごろからなんか変だなとは思っていた。お正月用の花材である根付きの松を途中からばっさり切ったときは度肝を抜かれたがこの人の好みなのかもと思うようにした。忘れ物も多く、剣山を持ってくるのを毎回忘れるのも気になっていた。
 遅れてやってきたその人を見ると1か月と少し会わない間に顔つきが変わっていてどきっとした。いろいろなことがひとつのことばですべて解けた。
 生け花教室に集まる人はみんな高齢なのでリスクをそれぞれ抱えているが、認知機能のほうは大丈夫と勝手に思っていた。そうでないことがわかり少なからずショックである。
 今日の花材は黒文字の枝2本、白いストック2本、赤い透百合2本。新芽をつけた黒文字の枝ぶりがしなやかで春の息吹が感じられる。白いストックの花は清新な印象で八重咲きなのではなやかさもある。少しダークな赤い透百合との色の組み合わせもすてきだ。

最初に活けたもの
ストックの花がばらばらの印象がある」

活け直したもの
中心となる黒文字の枝を変え、ストックの花をまとめるようにして活けた


 小雨降る街を歩ひてわが犬の姿まなうらに浮かびきたる

 わが犬の逝きて六月(むつき)変わりゆく街よりどころうしなふ思ひ

 大空よりこぼれ落つ雨の粒ほほにあたりて涙のごとく刻まれる

 鍋のなかスパゲッティのくねり踊りわが犬おりしあの日に帰る

 黒文字のしなやかな枝透かし百合ストックを活け終へる

 生け花の仲間のひとり認知症なるを気づきたり霙ふる日