アイロンから火花が散った

 あまりアイロンがけはしないのだが、しわが気になる洋服にアイロンをかけようとコンセントに入れたらじじと音がして火花が散った。
 急いでコンセントから抜き、アイロンはリタイアしてもらうことにした。見回せばわが家は古いものがいろいろあり、いつまでもつかと思いつつ使っているものがいくつかある。電子レンジオーブンや掘り炬燵のヒーターなど。洗濯機も古びてきた。

 三十年使ひき火花放てるはアイロンのリタイア宣言

 古びしものに囲まれて暮したる古びしわれと思ひておりぬ

 親たちが使ったアイロンが床の間の下の戸棚から出てきたがこちらはさらに古びていた。ふたつのアイロンを処分することにした。戸棚にはほこりだらけの団扇もあった。暑い夏に母が寝床に横になって使っていたものかもしれない。
 午後から車でホームセンターにアイロンを買いに行った。そんなに使わないので安いものを買った。それでもハンガーにかけた衣服のしわとりがスチームでできる。

 青空と不穏な雲が闘ひて雲の勝利で日が暮れゆきぬ

 雪雲が北国からちぎれて飛んできたような濃い鈍色の雲が青空をだんだん占めてきて、天候の劇的な変化が起こりつつあることがわかる。明日の朝は寒くなりそう。庭のメダカの水瓶にゴザで覆いをした。

 帰宅せし母の亡き骸愛犬とわれとひと夜添い寝せり