時間を遡る

 昨夜は雨が降ったようだが朝には上がっていて、大きなちぎれ雲が広がる青空が窓の向こうに眺められた。
 11年前に他界した友だちの命日が近づき、共通の友だちとその話題になったときいつかお墓参りに行こうねという話が出た。故人の故郷は新潟でお墓はそこにあるのだが、まだ一度も墓参をしていないので場所がわからない。故人の知人に連絡をとって墓地の場所を知りたいと思い、10年以上を遡って残して置いた葉書類や名刺類を探した。探し当てた葉書の住所をたよりに電話番号を問い合わせたが登録されておらずわからなかった。故人は俳句という趣味に励んでいたため、没後、俳句仲間の力で句集をまとめた。その句集を送っていただいたのだがその送り主の住所が同封されており、こちらで連絡先がわかった。
 すぐ電話をするとその方と話ができ、亡き友の墓所がある霊園の名前と場所を知っている人がいるので問い合わせてこちらに知らせてくれるとのこと。こちらのメールアドレス、電話番号などをそんなに急いでいませんからと言いながら伝えた。
 昔の葉書や名刺をさがしながら、もらった記憶にないカードが出てきたり、年賀はがきに書かれたメッセージをあらためて読んだりすると時間を遡るような感覚になった。常日頃忘れている遠い時間をたぐり寄せたようなひとときを過ごし、疲労感に襲われた。
 夕方近くになり珍しく仮眠をとったのはそのためかも。
 亡くなった友だちによく句会に誘われたことを思い出した。参加をためらっているうちに友だちはいなくなり、どういう巡り合わせなのかわたしは俳句ではなく短歌を詠むようになった。
 


 つかのまの外の空気に触れさせたく病む犬抱いて夜闇を歩きし

 病む犬は夜道を歩く犬のほう顔をもたげて目で追いにけり

 最後の夜わが腕のなか病む犬は顔をもたげる気力失せし

 苦しみより解放されし犬なれば静かな朝に霊やすむらむ

 雨上がりひかりあふるる秋の朝こたえることなき犬の名を呼ぶ

 咲き初めしほととぎす風に揺れつつ射しくる朝日にかがよいたり


洋室の窓から眺めた朝の空
スモモの木の向こうちぎれ雲を浮かべた青空がひろがる


鉢植えのホトトギスが咲き始めた
毎年同じころに咲く宿根草である
このブログをスタートさせたのが平成23年10月25日で
そのときもホトトギスが咲いていた