飲ませるか、飲ませないか

 午前中はしっかり雨が降っていたが、午後になり、晴れ間がでた。秋らしい涼しい日だ。
 長らく(といっても2〜3か月くらい)音信のなかった友人から電話があった。午前中、ケイタイにかかってきたがわたしは何かしていたらしく、気がつかず、午後、こちらからかけ直し、その時向こうの都合が悪く、こんどは向こうからかけてくれた。
 この一カ月の間に、近い親戚に3回の不幸があり、さらに現在、母親がICに入院中で、家に残された父親の面倒もあり、小学生のこどももいるので、超多忙で精神的にもハードな状態にある。
 友人はこの春、心房細動の発作が起こり、救急車を呼んだことがあり、現在も薬を飲みつつ、発作が起こらないよう管理している。
 彼女も犬を飼っていて愛犬家であり、犬友だちでもあるので、老犬レオの発作のこと、薬を飲ませはじめたことは電話や葉書なので伝えていた。今日はその薬を一時、中止していることを伝えると、「実はわたしも同じ薬を飲んでいるのよ」と返ってきた。
 心臓の発作といえども、脳が指令を出しているわけでその脳を鎮静化する目的で飲んでいるようだ。一日2錠。友人も最初は薬の服用に抵抗したらしいが、医師の説得により飲み続けていると言っていた。
 一度、薬の服用を3週間ほどやめたことがあるが、外出先で心臓の発作が起こりそうになり、それからは服用を続けているそうだ。
 医師からは飲み始めてから効くまでに3週間から1カ月はかかるといわれた。つまり、急激な作用のある薬ではないということ。
 友人の親戚に厚生省薬害部のお役人がいて、その人に服用している薬が安全なものかどうか聞いたところ、全く問題がないといわれたそうだ。
 ただ、厚生省薬害部といえば、薬害エイズの元凶ではないだろうか。信頼できるのだろうか。
 わたしは、抗てんかん剤の副作用について、友人に聞いた。多飲多尿、多食、ふらつきなどの副作用があるが、大丈夫?
 夜中にトイレに起きた時、一度ころんだことがあり、これがふらつきなんだなと思ったと、友人。
 でもそれくらい、というニュアンスの口調だった。それより、薬で脳のある部分(友人は脳の深い部分といった)の興奮を鎮める方が大事というふうに考えているようだ。
 レオも夜、トイレに行きたくて起きた時、ふらつきがひどく、わたしはびっくりした。これは受け入れるしかないのだろうか。
 友人は薬を飲みつつ、仕事をして、子育てをし、高齢のご両親の世話をしている。生活が高ストレス状態だからこそ、脳が異常に興奮するのを防ぐために薬が必要なのだ。
 レオの場合は、多分、高齢化による、脳神経の衰え、または異常から、脳が病的な興奮状態になることがあり、そのために歯ぎしりから始まる発作が起きるのだろう。
 友人は微量でも継続して飲ませた方がいいと言った。飲まないと決めたらそれでもいいが、飲んだり、中止したりを繰り返すのはいちばんよくないと。

 老犬レオは今朝起きてすぐ、顔を下に向けて部屋の隅に立っていたが、その後、歯ぎしりからいつもの発作になり、抱きとめていたので引っくり返ることはなかったが、顎の下に回したわたしの腕を強く圧迫し、顔を胸に押しつけるようにした。前足で三角形をつくり、その間に顔を入れて、顔をこするような動作をした。これはいつもの発作の典型的な動作。それほど発作は長くなかった。落ち着いてからは道路に出ておしっこをしたが、さすがほとんど歩かず、車にもたれて休んでいた。
 抱いて家に入れた。
 辛そうなレオを観るのはわたしも辛いし、薬を飲ませた方がいいのかどうか。考えている。

午後になり日差しがあたる板の間で眠る、レオ

 迷う気持ちがそうさせたのか。午後、両親の墓参りへ。何も答えるはずはない。父は生前、レオが一度、高熱を出したとき、血液検査の結果、ある数値が異常に悪く、危ないかもしれないという電話を獣医師から受けたことがあった。父はできるかぎりのことをするんだよ、とわたしに言った。幸い、そのときは解熱剤と抗生物質で治ったが、できるかぎりのことをするが父の気持ちでそれは変わらないだろう。
 今の状態で、できるかぎりのこととはなんだろう。薬を飲ましたほうがいいのか。

お墓参りの帰り、お寺の後ろにある神社がお祭りで
途中までお神輿とともに歩いてきた