ポルトガルの大好きな監督の映画を観た

 といってもDVDで、昨日、マヌエル・ド・オリヴェイラ監督の『コロンブス 永遠の海』を観た。現在103歳になるポルトガルの映画監督だが年に一作くらいのペースで映画を撮り続けている。わたしの大好きな映画監督で、いちばん最初に見たのは1993年の作品『アブラハム渓谷』。ポルトガル北部のポルトという街に流れるドウロ川の上流が舞台となっている。映画がきっかけでポルトガルポルトを実際に訪ねたほど好きな作品だ。そんなに好きな監督の作品なので、DVDを2回観た。1回目より2回目のほうが映画のよさを感じることができた。
 アメリカ大陸を発見したコロンブスはイタリア・ジェノバの生まれでイタリア人ということになっているが、映画ではコロンブスポルトガル人であるという新説を立証するための研究を、本業である医師としての仕事をしながら生涯にわたって続けたマヌエル・ルシアーノが主人公となっている。1946年のポルトガルの首都リスボンの港から始まる映画は、アメリカ・ニューヨーク、ポルトガルポルト、べージャ、さらに46年後のアメリカ・ニューヨークとバークレーポルトガルポルト・サントス島へと、半世紀の時間の流れの中で大西洋を行き来する、人生と研究の旅の物語でもある。
 コロンブスやマゼランなど、大航海時代の冒険家たちが大海原へと旅立ったリスボンの港から、冬の荒れた海を16日間かけて到着したニューヨークは濃い霧に包まれ、大都会の夜景を期待した、マヌエル兄弟をがっかりさせる。ポルトガルで取得した医師免許を生かしてアメリカの病院に勤務したマヌエルは、独自の視点で歴史書の解読を行い、コロンブスアメリカ人だったという仮説の証明に力を注ぐ。
 ポルトガルに戻ったマヌエルは、教師のシルヴィアとポルトで結婚し、新婚旅行を兼ねて、コロンブスの生地と彼が考えるク―バという街に車で向かう。ここはこころが踊るような場面だ。教会での結婚式の誓いの言葉が旅立ちの映像と重なり、ふたりは新たな人生の旅と、同時にコロンブスの生誕の謎を追う旅に、出発するのである。車の外を過ぎ去る風景や、訪れる街の様子、白い壁にくすんだ赤の縁取りがある教会や、教会の中のブルーの装飾タイルなど、すべてが謎を解く鍵を秘めているようにも見える。
 47年後の2007年、年老いた夫妻はニューヨークからバークレーへ、新婚当時と同じように車で旅をする。ふたりは結婚という関係性が持つ様々な困難を、それぞれが仕事を持つことで乗り切ったと語り、互いの愛情を確認し合う。アメリカ・バークレーから眺める曇天の海が少しずつポルトガルポルト・サントス島の
明るい青い海へと変わり、ふたりはコロンブスの生誕の謎を追う旅のフィナーレへと近づく・・・・・・・・・
 ポルトガルから眺める海と、アメリカから眺める海。海はつながり、いくつもの人生が海の彼方をめざして旅立っていった。その想いがこの映画の中に見えてきた。