ちょっぴりホラー

 箪笥の上に、母が旅行に行った際に買い集めたこけしなどの人形を飾っているガラス棚がある。100体近くの人形がおさまっていて、数年前に一度、中のほこりをきれいにして並べなおしたがそれからはそのままにしてある。その中に、一対の天狗のこけしがある。赤い顔をした大きな天狗と青い顔をした小さめの天狗。ただ、大きいと言いっても10数センチくらい。小さい方は10センチ弱である。この小さいほうの顔がしばらく見ないと、くるっと回っていることにある日気付いた。大小の顔を同じ方向に向けているのに、である。昨年は何回も顔の方向が変わっていた。いつもテレビがある方向に回るので、テレビが見たいのか(笑い)と思ったりしたがもちろん、そんなことはない。人間たちが眠りにつき、寝静まった夜中にこけしや人形たちがてんでに動き始め、朝になるともとの場所に戻る、なんてことはないのである。昨年は大震災があり、東京も余震が多かった。この揺れによって、たまたま回りやすいこけしの顔が回ったにちがいない。今日手にとって確かめたら、赤い顔の大きいほうの天狗は顔がしっかり固定されているが小さいほうの青天狗の顔はさわるだけでまわるくらいゆるかった。