いつもの散歩コースで会う犬

 朝は冷え込みが強かったが日中は気温が上がった。寒さのため弱ったので室内に保護していた目高を水瓶に戻した。5〜6枚の新聞紙を水瓶に巻き付けて少しでも寒さをやわらげるようにした。
 お昼過ぎまで炬燵に入り、昨日買った「伊勢物語」を読んだりして過ごした。外に出るとあたたかいので、庭に散らばっている剪定枝を拾い集め、ゴミ袋に入れた。梅やスモモなど剪定したい木が何本もあるが今日は見送った。冬の間、遅くても2月半ばくらいまでには剪りたい。
 夕方近くになり、近くのお寺のお墓参りを兼ねて散歩に出かけた。途中で買い物もする最近では定番の散歩コース。川を遡る散歩コースだが時には下流に向かう散歩がしたいこともある。ただ、下流方向は買い物ができるところがなく、最近あまり歩かないのはそういう理由があるかもしれない。
 墓地にいる頃には西の空が赤くなりはじめ、入日が墓地に植えられた白木蓮のつぼみをロゼの色に染めた。あたたかい空気とあいまって春が近づいたような、かすかな気配を感じた。
 墓地を出て歩き始めた。どこまで川を遡るかはこちらの気分次第。川から道路1本ぶん中に入って住宅街を歩いた。そこからまた川に戻る道を歩く。川から少し手前、道路に面した庭の広い家に放し飼いにしている犬がいる。1メートルほどの高さの門扉やフェンスに囲まれている庭から犬がわたしのほうにやってきた。犬は二本足で立ち、門扉越しにわたしの顔をなめようとした。まともに口をなめられないようにしながら、頬や口のまわりはなめさせた。犬の手をわたしの肩にのせるとうれしそうだった。あまり長く二本足で立たせるのはかわいそうと思ったのでそんなに長くはなかったがこの犬が好きになった。見ず知らずのわたしに無防備にこころを開いて歓迎してくれるのがうれしくって。実はこの犬との交歓は今日で2回目。お互いにお互いが好きなことをまったく疑わない。そんな犬との時間が好きだ。


 二本足で立ちたる犬わが肩に門扉ごしに手を乗せ歓迎す

 サルナシの実二つに割ればエメラルドの色の果肉みずみずし