お昼前に弟が来た

 暑くもなく寒くもなく、ちょうどよい気候で気持ちがやわらかくなる。
 9時から日曜日美術館を久しぶりにしっかりと見た。鈴木晴信の錦絵が紹介されていた。男女ふたりの錦絵は男と女が判別しがたく、美少年と美人という組み合わせがよかった。役者絵に見るなまなましい男らしさは好まないので。
 弟より電話がありお昼前に来るとのこと。11時頃来て小一時間ほどで帰った。いつものようにお茶を出し、庭を見ながら話した。体調はあまりよくないようで、現在週に3日仕事をしているが早くやめたいと言った。なるべく早く仕事から解放されることを願っている。
 図書館から借りてきた短歌のアンソロジーを読んだ。「集成・昭和の短歌」という本。岡井隆氏が編集に加わり、前書きと後書を書いている。平成が終わろうとしているときに昭和の短歌を見渡そうというつもりはないが斉藤茂吉の「赤光」や「葛原妙子全歌集」を読んでから、昭和の短歌に興味が湧いてきた。
 ふと思うのは平成が終わった頃、「平成の短歌アンソロジー」みたいな本が出るのだろうか。平成の短歌とはどんな短歌か。30年ほどしかない平成はひとくくりにするのは短すぎるかもしれない。昭和は昭和64年1月7日まで62年あまり続いたのである。
 夕方近く散歩に出た。丸子川をさかのぼり、等々力不動のほうへ。住宅街の古い家がこわされ、あちこちで新築の工事をしている。樹高の高い樹々に囲まれていた旧家と思われる家も切り開かれ、びっくりするほど大きな家が建設中だ。柴犬レオとよくこの家の横を歩いた。あの時は当たり前のように見ていた屋敷がいつの間にか消えている。


 秋の陽に四十雀は衣更えしたるがに美しき羽根ひらめかす

 陽のあたる窓辺にいちまいの座布団だれがすわってもいいやうに置く

 座布団に秋日と木影が座りをり風ふけばときのま影は揺れて

 古家の雨戸をあける音さへもなつかしく思い出づる日あるらむ

 庭隅にこぼれ種より花咲きぬ赤き薄きのインパチェンス


 うすみどりのたまにふれればはじけとび種はひととせ過ぎて花となり

 金色の粉ちらすさまの湖面に夕陽にそまる白帆が浮かぶ