「アルチンボルト展」を見に行く

 朝から小雨がぱらつく天気だったが家にいるのがちょっと苦痛になりでかけた。昨日、老犬ももこの首輪の歌を詠んだことがきっかけで、家にいるとももこのことが思い出されて辛くなってきた。
 午後直ぐ家を出て、2時過ぎに上野に着いた。平日の雨の日にしては人出があった。JR上野駅公園口を出て、改札前の歩道をわたってすぐのところにある国立西洋美術館で開催している。
ジュゼッペ・アルチンボルトは16世紀後半にウィーンとプラハハプスブルク家の宮廷で活躍した、イタリア・ミラノ生まれの画家(パンフレットより引用)。この展示会ではアルチンボルトの作品と、同時代の画家、彼に影響を与えた少し前の画家の作品が展示されている。
 いちばんの見どころは写実的に描いた果物や草花、鳥類、魚類や甲殻類脊椎動物などで構成した肖像画だろう。「春」「夏」「秋」「冬」と「大気」「火」「大地」「水」の8作品がいちばん見応えがある。
ただハプスブルグ家の皇帝や大皇女を描いたふつうの肖像画も展示していて、その見事な描写力に驚いた。皇女を飾る宝石の装身具はまるで今描いたかのようにきらめいている。肌の色もすばらしくきれい。
 こういう肖像画を描くアルトンボルトが鳥や花、果物をリアルに描き、それが人の顔となっている。目元や口元の表情が違うのもおもしろい。さやから中の豆がのぞいているグリーンピースを唇と歯にして、ニッコリとしているのもあった。菫の花の目玉もあった。よく観るとほんとうにおもしろい。
 このような寄せ絵はアルチンボルトが始めたものではなく、その前の時代から描かれていたようだ。またアルチンボルトを真似て描く画家も現れた。
 それなりの人はいたがゆっくりと自分のペースで鑑賞できたのでよかった。
 国立西洋美術館を出て次は動物園近くの都立美術館へ。こちらは前に「ボストン美術館展」を見に来た時に気になっていた展示会で、あの時は疲れていたが時間があれば来たいと思っていた。
 杉戸洋の「とんぼとのりしろ」という展示会。とんぼとのりしろというテーマは深すぎてはよくわからなかったが、展示会はとてもよかった。色と形、素材の持つ質感がこことよく語りかけてくる。油彩の絵画が広い展示場のごつごつした壁にゆったりと絵画と絵画の間を広く取って展示されている。建物や木などのシンプルなかたちと実にきれいな色。こういう絵がそばにあったら気持ちがよくなるだろうな。
 

 霧雨の公園の木の下あたりやわらかき楽器の音色流れて

 凹凸のある砂色の壁から手品のごとく色あふれ出る