スケッチブックの最後の一枚に

 日中は庭仕事はもちろんお休みだし、外出もしないでエアコンをつけた室内で過ごした。
 昨年買ったスケッチブックが最後の一枚を残すだけとなり、自分の中で決めた通り、昨年亡くなった柴犬レオの絵を描くことにした。新しいスケッチブックの最初の一枚と、今まで使っているスケッチブックの最後の一枚はレオの絵を描くと決めたのである。
 撮りためた写真を見ながら描くわけだが、2010年の秋に撮った一枚を選んだ。父がまだこの世にいて、病院に入院中だったときに庭に面した外廊下で撮った。毎日のように病院まで車で父に会いに行ったが、家に帰ればレオとののんびりした時間があった。父の症状は不安定で、主治医からいつ何が起こっても不思議でない状態といわれていた。そんな中、家族であるわたしもときにはほっとするひとときが持てた。
 気温が下がり始めた晩秋の頃、陽射しがたっぷりと注ぐ廊下でレオは気持ちよさそうにまどろんでいる。かたわらにはシャコバサボテンの鉢が光を浴びて、緑の葉をキラキラ輝かせ、葉先には小さなつぼみがたくさんついている。こういう時間があったのだな。
 父の介護と看取りの日々を送っていた頃、レオはいつもわたしのそばにいてくれた。他に行く場所もなかった。自分自身も体調が良くなく、父の面倒で手いっぱい心一杯だったわたしはレオのことをそんなには考えてはいなかったかもしれない。でもそばにいてくれることをいつも感謝していたと思う。寂しさや不安や心の痛みをやわらげてくれた。大切な相棒だったレオ。今でも心の中でわたしの相棒としていてくれるレオ。心を込めて描いた。


写真を見て鉛筆でスケッチして、水彩色鉛筆と透明水彩色絵具で彩色した