午前中、掘り炬燵を出す

 朝起きて窓を開けるとひっそりと雨が降っていた。葉っぱが揺れるのを見て降っていると思った。静かな雨なので耳をすまさないとわからないがひがな雨が降った。
 最高気温は14℃くらいで、10月に最高気温が15℃を下回るのは46年ぶりとか。
 家の中にいる限り寒さはほとんど感じないが掘り炬燵を出すことにした。例年10月下旬に出すことが多いので少し早いが。
 床に置いてあるものをどかして炬燵のある部屋全体をまず掃除。老犬ももこの絵や写真、ぬいぐるみ、花などを置いた一角も移動させた。次に卓上に置いてあるものを他の部屋に移動させ、卓を片付けた。
 ゆっくり作業をすすめるが身体を動かすのであたたかくなった。
 炬燵の大きさの畳を開けて、なかに収納された掘り炬燵のやぐらを床下に見るとなんか感無量である。こうして何十年も同じことをこの季節に続けてきた。長い間父母たちがこの作業を担い、わたしがするようになってからは10年ほど。それでも10年たったか。
 炬燵のやぐらは飴色になり、年期が入っている。だが頑丈である。
 ゆっくりと作業をしたがなんとか終えた。ももこの絵や写真、花瓶に活けた生花を部屋の一角にもどした。この部屋でももこの絵や写真はそれなりの場所を占めている。炬燵を出した部屋でももこのコーナーは炬燵のない季節より存在感を増したように見える。まるでそこにももこがいるように。元気な時はももこのケージを置き、病気になってあまり歩けなくなってからはももこのベッドを置いた場所だから、ももこがいるように感じても不思議ではない。
 午後は自室で1時間ほど仮眠をとった。耳を澄ますと雨が降るかすかな音が聞こえる。



 甘酒を母が作りし掘りごたつ夏は床下にやぐら眠る

 床下に炬燵のやぐら飴色となりて団らんのときは遠し

 耳すませば布こするやうな雨の音しずかに降り止まぬ秋の雨