段菊が咲き始める

 

 

 朝は不安定な天気で薄日がさしているのにとつぜん雨が降ってきた。
 庭に出て雨戸を外してドライバーで簡単な修理をしているところだった。かすめるように雨が降りさっとあがった。
 花壇に昨年の秋に植えた宿根草の段菊が数日前から咲き始めた。昨秋、この段菊と浜菊の2種類を植えたが浜菊は冬越しができなかった。どちらも冬は地上部が枯れて根が冬越しをするのだが、浜菊は春になっても芽が出なかったのである。
 段菊は春に新芽を出し、夏も元気に越して花を咲かせた。薄い紫色の花ははなやかさはないが初秋を迎えた気持ちにそうような風情がある。
 昨年8月末に老犬ももこが死んでから植えた段菊が無事に根付いて花壇で花を咲かせているのを見ると、複雑な思いになる。ももこがいない時間が過ぎて1年あまりを迎えたという寂しさ。薄紫色の花がももこがいないことを静かに語りかけている。ももこがいたときにはない花壇の風景、小さな変化でも不在の重みを胸に突き刺してくる。ほんとうにいなんだ。あたりまえのことだがしみじみと思う。


 まぼろしの犬と遊べる秋の日よ廊下と部屋を追いかけられて

 わがもとに追ひつきたる犬好物のクッキーふたつ手に入れたり

 われひとりパントマイムの役者となり犬と遊ぶ木漏れ日のなか

 西日さす和室に野の花活けられて草の影畳に異生物のごとし

 国道沿いに栗の実たわわ立ち止まる初老の男は泥棒志願

 栗の実のはちきれるばかり見上ぐれば記憶の栗御飯匂へり

 わが注ぐ水を待ちたる種子いずこの大地に眠りてをるや

 十年前(ととせまえ)母の亡き骸と家路たどりし道今日はひとり

 運転するわれの目に涙あふれたり光に輝く銀の球見ゆ

 まっすぐに前を向きたりしめりたる眼球で見る赤信号

 雨戸の修理をするにふりそめる日照雨をはげましと思ふ不思議

 犬二匹われに従がひ朝の街を歩きたり見へぬ犬らが

花が段々になって咲くので段菊とわかりやすい


四日前に蒔いた矢車菊の種が発芽した
びっくりするほど早い
水を吸収しやすい種だからか

同じ日に蒔いたニゲラ、千鳥草、オダマキは発芽の気配もない
千鳥草は発芽温度が20℃前後だったと思うので気温が高過ぎるかも