老犬ももこが柴犬レオに間違えられた

 今日も日中は陽射しがぽかぽか。
 午後のある時間、老犬ももこと家の前の道路を歩いていたら、女の方に話しかけられた。顔見知りではあるけれど名前は存じ上げない方だ。
 ももこを見て、「よくここまで回復したわね。どうなるかと思っていたら・・・・よかったわね」と言われた。その話ぶりから、ももこを亡くなった柴犬レオと勘違いしていることがわかった。
 晩年のレオは同じように家の前の道路を歩いていた。身体を斜めにしてくるくるま回りながら歩いていた。そういうレオの様子を見ていた女の人が、あの状態から回復したと思ったのである。
 すぐ勘違いを訂正した。あれは前の犬で亡くなったんですと。一瞬、もしそうだったらどんなにうれしいかとも思った。
 ももこは雌でレオは雄。ももこの耳は大きくて、レオは小さくできりっとした耳だった。体長も体高もレオのほうが小さい。だがももこには柴犬の血が色濃く流れていてレオと似ているのである。特に年をとってからのレオは今のももこに似ているように思う。腰を落として歩く様子が似ている。
 14〜15歳のレオと暮らしていた、その続きをももこといっしょにしているつもりなのだろうか、わたしは?

 春まではと願っていた父なれど立春待たずに鬼籍に入りき

 老犬に歳の数だけ豆あげた長生きしてねと気持ちこめて

 鬼の影庭に潜んでいるような如月夕暮れ柿の木黒し

はちきれそうにつぼみがふくらんだ沈丁花