音もなく雨が降る日曜日

 まだ暗い早朝は曇っていた。夜が明けてしばらくしてから雨が降り出した。雨が降る前に庭に出て、メダカの甕を覆った防寒用のゴザを取り外した。桃の木の下に行き、うれしい発見があった。もう出ないだろうと思っていたクロッカスの芽がたくさん出ていた。
 桃の木の下には青紫色の花を咲かすクロッカスが三つの群(むら)をなしている。そのうち、2つの群の芽は1月半ばころに目にしたが、3つ目の群の芽が出ないので、球根が夏越しをできずに消えてしまったと思っていた。それが今朝、同じように20〜30個ほどの小さな芽を出しているのを見つけた。桃の木の根元近く、枯葉がおおっていて目につかなかったのと、もう少し離れた場所を探していた。今年も昨年、一昨年と同じように青紫色のクッロッカスが3つの塊をつくって群れ咲いてくれると思ったら、心の中が少しだけ明るくなった。
 小さなことが棘のように刺さって、昨日からもやもやとした気持ちが続いていたが、クロッカスが心の中に垂れ込める雲を追い払ってくれた。ことばを話さない花だからこそ、木だからこそ、話しかけてくることばがある。ありがとう、花たち、木々たち、草たち。


桃の木の根元近くに見つけたクロッカスの芽
同じくらいの数の芽が出ていいる3つの群(むら)がある


花壇の中で比較的寒くないところに植わっている忘れな草
咲き初めし青い花は春のかそけき声のよう