蜩の声

 早朝5時過ぎ、庭から聞こえる蜩の声に誘われるように外に出た。どこかためらいがちの蜩の鳴き声は、わたしが庭に出るとぱたっと止まり、それから鳴くことはなかった。
 昨夕も庭で蜩が鳴いていた。この庭で蜩の声を聞くのは、何十年ぶりかもしれない。こどもの頃はよく聞いた覚えがあるがそれは半世紀以上も前のこと。大人になっても多分、聞いたのだろうがあまり記憶にない。
 なつかしい蜩の声。油蝉やミーンミーン蝉しかいないと思っていたこの庭で蜩が鳴いてくれた。晩年の柴犬レオと毎日のように散歩した近くの用水路まで歩き、橋の上に来ると心地よい風が吹いていた。こんな風の涼しい朝はレオがいたら、きっといっしょに来ただろう。水路沿いに植えられたソメイヨシノの木の下ではレオが身体を斜めに傾けながら、くるくるを回るように歩いていた。レオの姿のない木の下を見やると、一生懸命に歩こうとしていた老犬レオの思いが残っているような気がした。最期まで生きようとしたレオの思いはわたしの心の中に刻まれているが、家の中にも庭にもよく散歩した道にもレオの思いは漂っている。そう思うと晩年のレオの姿がふわっと桜の木の下に浮き上がってきた。

 今日も日中は昨日に続き、陽射しがぎらぎらしていたが、そこはかとなくパワーの衰えが感じられた。午後からは少し前から行こう行こうと思っていた美容院へ、車で行った。思いっきりショートにしてもらった。美容院からの帰り、夕食の買い物を少しして駐車場まで歩くとき、空を見上げるときれいな鰯雲がひろがっている。この雲は天気が崩れる前に出ると聞いたことがある。明日からは灼熱の夏ともしばらくお別れになりそうだ。
 夕方は風が強くなり、夜はエアコンをつけないでも過ごせる。といっても室温は30℃ある。
 昨夜はきれいな月が出ていたが今夜は雲が多いのでどうだろう。外に出て見たら、朧月が浮かんでいた。今夜は十三夜あたりだろうか。風があるので、窓を開けていると障子ががたがた音をたて、まるでレオが障子を寄りかかりながら歩いているように聴こえる。なんとなくそばにいるような、そんな気になる。


今年の朝顔は葉が繁って蔓もよく伸ばし、
2012年、2013年とは比べものにならないくらい元気
葉が多くて、花が埋もれてしまう


ほれぼれとするような美しい青
透明感のある色は、早朝に吹く風の色?


横から見ても美人な朝顔


後ろから見ても美しい
花の根元から立ち上がる線の美しさ
白と紫のグラデーションで実に繊細に彩色され、
目が吸い込まれた


赤系と青系の朝顔


青と白の朝顔