昨日は浜名湖花博2014へ

 5月が終わり、6月が始まった。6月は昨年6月15日が命日の愛犬レオにとって、未完の月。半ばで時間が途切れたレオの6月を今年は、レオと共に最後まで過ごしていきたいと思っている。
 わたしにとって感慨深い6月の最初の日は、浜松市に住まう大学時代の旧友に会いに行った。今年の2月か3月くらいに、浜名湖花博にいっしょに行こうということになり、少し遅くなるが6月1日に決めたのである。
 昔、仕事で時間の約束をしていた新幹線に数秒の差で乗れなかったわたしは、発車時刻の45分も前に新横浜駅に着いた。がらがらのこだまに乗り、小田原駅でもう一人の大学時代の旧友と交流。浜松駅までの1時間半ほど、積もる話をここぞとばかり話し続けた。車窓の隅には、外の景色も眺められるように両面に2枚のレオの写真を入れた透明な袋を立てかけ、亡き愛犬もいっしょに浜松に行く心つもりである。
 駅では友だちが妹さんと車で待っていてくれた。再会を喜び、はじめましてのあいさつをして、一路、浜名湖花博の会場となっているフラワーパークへ。まだ10時過ぎくらいだが陽射しが強い中、会場に入ると人が多く、圧倒された。薔薇の花や、その周りに植えられた草花を眺めながら、エントランスの真正面に堂々と建つ巨大温室まで歩き、中に入った。この暑いのに温室に入ることに尻込みしたが中は思ったよりは暑苦しくなかった。ただ、人はほぼぎっしりで、こういう状態が続いたらかなわんなあと思った。
 巨大温室の次は屋外のバラ園へ。著名な人の名前が冠せられたハイブリッド・ローズを植えた一角や、あふれるばかりに咲き誇る、色とりどりのフロリバンダローズを植えた中心部、蔓バラは花いっぱいの大きな柱のように、仕立てられている。スタンド仕立ての愛らしい濃い目のサーモンピンクの薔薇も目を引いた。
 バラ園を堪能した後は急な斜面にジグザグに作られた長い段々を降りていき、山と山の間にひろがる細長い窪地に出た。山の斜面にはうっすら色づき始めた紫陽花、花の終わったツツジなどが散見され、山と反対側の通路沿いには、さまざまな種類の桜の木が植えられ、並木道になっている。友だちの妹さんによると、緑色の花が咲く遅咲きの桜もあるそうだ。桜の種類の多さに目を見張った。一本ごとに種類が違い、ネーミングもそれぞれ風情がある。
 このあたりでわたしは、ばて気味となり、目的地である花菖蒲園に着いた頃は、花を愛でる気力も尽きかけていた。友だちと歩を進めながら、気持ちは日陰で休みたいと。菖蒲園のどん詰まりにパーゴラがあり、日陰にベンチがあったので即、休憩し一息ついた。
 帰りは来た道と反対側をもとにも戻る感じで歩いたが、こんどは山の側面の紫陽花を楽しむ余裕も出て、ほどよい樹陰と吹き渡る風、緑の美しさに包まれ、こういう自然を生かした公園がいいなと思った。
 花博の会場は今回二か所にわかれ、最初に訪れたのがフラワーパーク。もう一つ会場であるガーデンパークをさらに陽射しが強くなる午後に歩き回るのは大変だとなり、浜松市二俣町出身の日本画家、秋野不矩(ふく)さんの美術館に行くことにした。フラワーパークから車で30分余り、浜松市天竜区二俣町の街を見下ろす高台にある。遠州鉄道の終点駅からバスに乗り、さらにかなり歩く場所のようだ。
 美術館は山の中腹の切り開かれた所に建てられ、縦長の木を並べた壁が印象的。屋根は板のように薄く切った石を重ねている。館内の展示スペースはそんな広くないが、靴を抜いて上がれる、きれいに磨いた大理石(?)や芦を組んだ床の触感が素晴らしく、リラックスできる。
 特別展が開催され、秋野画伯の絵画は5点しか展示されなかったが、代表作であるインドをテーマにした大きな絵画を観ることが出来た。光の色や大地の色が日本とは全く違うのだろうか。黄色やオレンジ、茶の使い方に目を奪われた。特別展で展示された稗田一穂さんの「遠い花火」には、どこかで見たことのある橋が遠景にシルエットで描かれているが、資料を読んだら多摩川に架かる橋であることがわかった。レオと散歩の時によく見た二子玉川の橋かもしれないと思った。

 帰りは美術館近くの古刹に立ち寄った後、一路、浜松駅へ。駅ビル内のカフェで短い時間お茶をした。今回で浜松湖花博は2度目である。2004年の花博を訪れたときと比べ、過ぎた歳月が身辺にもたらした変化を思った。10年前は父母がこの家にいたし、レオも7歳でまだ元気盛りだった。招待してくださった浜松の友だちとその妹さんには、感謝し切れないほど気遣いをしていただき、お世話になった。浜松名産のお土産もいただいた。こんなにまでしていただき、いいのだろうか。いつまでも名残惜しく手を振りあった。
 いっしょに浜松まで行った友だちともたくさんの話ができ、大学時代の後の空白の年月がお互いに少しずつ分かり合えることができた。手土産もいただき、恐縮である。
 楽しい1日を共にしたことを喜び、再会を約束して別れた。


温室内に展示されていた青色の胡蝶蘭


ハイビスカス〈温室内のジャワガーデンで)


薔薇園


薔薇園から下に降りてしばらく歩くと花菖蒲園がある
まだつぼみが目立つ
この辺りは風が気持ちよかった



秋野不矩美術館
漆喰壁には藁が混ざっている