甘酒を飲み、歌集「犬の歌」を読む

 風はないが空気が冷たくなり、冬が近づいていることを感じる。日曜の朝なので、午前中はストーブをつけた自分の部屋で、今日の新聞だけでなく読めなかった先週の新聞を読み、気になる記事は切り抜いた。
 午後は近所に買い物に行き、酒粕があったので買い、細かくちぎってお湯でつぶしながら煮て、お砂糖を入れ甘酒を作った、甘酒は昨年の冬、柴犬レオとの生活で大活躍した飲み物だった。夜中に起きることが多いレオを見守ったり、世話をしたりで身体が冷えた時、ショウガ汁を入れた甘酒を飲んだ。昼間も夜も飲んでいた記憶があるが、もしかしたら年が明けてのことだったかもしれない。
 今日は甘酒に温めた牛乳を3割ほど混ぜて、飲んだ、この飲み方も昨年よくやった。懐かしい味。同じ味なのでレオがいないのが不思議な気がした。
 レオのことを思い出したので、長い間借りたまま読んでいない歌集「犬の歌」を読んでみた。図書館から返却するよう催促されているが読むことから遠ざかっていた。
 この歌集の作者である平岩米吉氏が前書きで、「犬に対する私の心情を最も率直に歌い」と書いてある第四の「老犬」の章を読んだ。

 やがて死ぬる生命をもちて犬とわれ相寄りおくる日々のかなしさ
 われと犬、ともに老いつつ春浅き芝生に黙(もだ)し憩う安けさ
 静かなる夜ふけとなりてわが側に老い犬はあり寝息たてつつ
 ひそかなる水飲む音のきこゆるは老(おい)の昼寝の眼ざめたるらし
 目に見えぬ同族の霊(たま)を呼ぶごとし老いて夜毎に遠吠ゆる犬
 かい撫でて愛しき顔見ておかむ縁(えにし)の絶ゆる日もやがてこむ
 うしろむき背中まるめてひとり寝る老の姿に涙わきくる
 十七年われと書斎にくらしたる犬の生涯ここにおわれり
 老病みに痩せし遺骸(むくろ)よ寒からむと沓下(くつした)はかせ行かしめにけり
 一頭の犬にかかはりつつ憂いかつ喜びて一年(ひととせ)は経ぬ
 街にいて思わぬ時にわききたる肌を吹きすぐる悲しみのあり
 
 生きゐしが世になしというおそろしさ突きあぐるごと時に襲い来

 犬らみな生命(いのち)を委ね生きゐしをわれのいたらぬ悔いぞ多かり

 老犬の章の歌からいくつかを上に書き記してみた。
 老いて頭を病み、発作を繰り返し、くるくる回って歩くようになったわが愛犬レオへの思いと重なるところも多く、涙なしには読めない。
 「生きゐしが世になしというおそろしさ突きあぐるごと襲い来」の歌は、あまりにわたしの気持ちと重なっていて、読んで苦しいくらいだ。
  
 泣いてばかりいるとレオがどうしたのかなと思うといけないので、今日はこの辺で本を閉じよう。


昨年の12月1日のレオ
食欲のムラがあり、やせている
手作りのフリースを着て、わたしといっしょに裏庭に出た
ギボウシの葉が枯れ、シンビジュームの鉢が軒下に置いてあるのは
今年と同じ


鉢を支えにしながら回って歩いた
レオの顔のそばにある鉢には、今年は濃いピンク色のガーデンシクラメン
薄いピンク色のプリムラ・ジュリアンを植えてある