「夏の思い出」の絵を描いた

 10月の最初の日は雨が降ったり止んだり、ときには晴れ間が出たり、めまぐるしく変わる天気の一日だった。蒸し暑くて、歩いていると汗ばんだ。
 午前中は、パソコンに保存した写真を見ながら、絵を描いた。8月初めに友だちのお見舞いのため千倉に行ったが、病院からすぐ近くの漁港まで早朝散歩をした。そのとき撮った写真である。
 ひと月ほど前に鉛筆でスケッチをしたが、気に入らなくてそのままにしたあったのを数日前に描き直した。今日は水彩絵の具で彩色した。スケッチブックが大きめなので、かなり時間がかかった。
 亡くなった柴犬レオを描きたくなり始めた絵なので、絵を描くと自然とレオのことを思い出す。最初はレオだけを描いていた。ほぼ毎日、何枚もスケッチしたこともある。日がたつにつれて、だんだん描く枚数は少なくなった。それでも多い時はひと月に10枚くらいは描いていただろう。レオを描き始めたのは昨年の4月。一年と少しの間、レオを描くことができた。裏庭で眠っているレオのそばで、火鉢を逆さにしてその上に座り、鉛筆でスケッチをして、水彩色鉛筆で彩色した。あの時は今思うと、最高に幸せな時間だった。
 レオがいなくなり訪れた千倉の町。早朝の散歩。あの風景、波が砕ける音はいつもでも心に残り、レオを失った痛手に苦しむ心をいやしてくれた。レオを描いていた時のような幸福感はないが、この絵の向こうにもレオがいるような気がした。いや、レオの思い出が重なっているような気がした。


厚い雲の向こうに朝の光があわく見える
漁港の夜明け


2005年10月7日、8歳のレオ
多摩川の河原にあるコスモスが咲く花壇の前で