[暑いですね」で過ぎた夏

 昨夜の老犬レオは、蒸し暑かったせいかはあはあ息が荒く、なかなか寝付かなかった。エアコンをつけたが、冷たい風がに苦手なので、すぐ消したのもよくなかった。玄関のたたきに降りて、3時過ぎタイルの上でやっと眠った。
 翌朝は寝ついたのが遅かったにもかかわらず早く起きた。3日ぶりに朝ごはんを食べたのでひと安心だ(一日一回、夕ごはんは食べていた)。
 朝から雲が多かったが、午後から雨が降った。ひさしぶりの雨音が耳にここちよかった。木々の葉っぱを打つ音。庭木もおしめりを喜んでいるようだった。風が急に涼しくなり、雨が降っている間だけ、すっかり秋になった。 
 短い雨の後、しばらくして日差しが出て、蒸し暑くなった。だが秋はすぐそこ・・・・・・。
 思えば、道で人に会えば「暑いですね」とあいさつして過ぎた夏だった。まず季節のあいさつ。これで終わることもあるし、話しが続くこともある。
 冬になれば「朝の冷え込みはきついですね。日差しがでるとまだいいのですが」なんて、あいさつをするのだろうな。
 こうして、暑い寒いのあいさつができるのは、平和の証しかもしれないな。
 小津安二郎監督の映画『東京物語』のラストシーンだったと思う。老妻を亡くした夫がひとり、部屋に座っている。近所の奥さんが声をかける。尾道だったから、その地方の言葉で。今日も暑くなりますねえ。みたいな。
 夫は笠智衆が演じていた。亡くなった妻は東山千栄子。同監督の『麦秋』では、二人は親子で、笠が次男の役だった。
東京物語』は、戦後まもなく日本が舞台で、「暑くなりますねえ」のあいさつで一日が始まるのは平和な時代であることを象徴しているが、平和な時代にも人の生き死にはある。残された夫の孤独がじんわり迫ってくるシーンだった。
 亡き父も母が亡くなった後、がくんと衰えたので、重ね合わせるところもある。
 戦争は終わったけれど、多くのものを失った日本の姿が、あの映画の中にあるような気もする。
 季節のあいさつは平和の証し。いつまで続けるのだろうか、という思いもちらっと感じた、この夏だった。

東シナ海を大型で非常に強い台風が北上している。関東は台風の影響はないが、変わりやすい天気と、30度を超える真夏日は明日も続くらしい。お彼岸の中日あたりから涼しくなりそうだ。

今日の老犬レオは、昨日より起きている時間が長くなった。夕ごはんも普通に食べた。歩いているとき、しっぽが直角に曲がっていることが多くなった。しっぽの付け根にノミがいるせいかと思っていたが、もうノミはいないと思うので、違うようだ。からだが傾いて倒れそうになるので、しっぽでバランスをとっているのかもしれない。

午後雨が降った後のインパチェンス
もうムスカリの葉が伸びてきた