久しぶりにいい映画「キリマンジャロの雪」を見た

 老犬レオの調子も安定しているので、久しぶりに映画の試写会にでかけた。でかける前にレオが外に行きたいとないたので、外に出し、そのため遅刻しそうになったがかろうじて間に合った。映画は『キリマンジャロの雪』というフランス映画。この映画はロベール・ゲディギャン監督の作品で、以前に『マルセイユの恋』という同監督の映画を見て、よかったのでぜひ見たいと思っていた。この映画の舞台は南フランスの地中海に面した港町、マルセイユ。『マルセイユの恋』と同じ。ある会社が人員整理を行うため、労働組合の委員長であるミシェルがくじを引き、会社に残る人を決めるところから始まる。ミッシェルは自分が会社に残るくじを引くが、くじの権利を義理の弟(妻の妹の夫)に譲る。彼は50代半ばくらいで、仕事を失えば再就職はむずかしい年代だが、男気を出したのだ。フルーペーパーの宅配のようなアルバイトをヘルパーの仕事をしている妻(マリ・クレール)とともにやって生計を助けたりする。かっての仕事仲間やこどもたちが彼らの結婚記念日を祝って、パーティを開くがそこには会社を解雇された仲間も招いた。だがこれは仇になる。ミッシェル夫婦と、妹夫婦が夕食の後、トランプを楽しんでいると強盗が押し入り、椅子に縛られ、結婚記念にもらったアフリカの旅行券や現金、カードを盗まれる、この強盗はかって同じ職場で働いていた若者クリストフだった。ある偶然からこのことを知ったミッシェルは警察に通報し、彼は逮捕される。彼は小学生の弟二人と暮らしていて、借金を返済するため、強盗に入ったのだ。だが彼は初犯で、いっしょに強盗に入った仲間に分け前をごまかされていた。クリストフに警察で面会したミッシェルは彼に侮辱され、怒りを抑え切れなかったが、くじで会社に残る人を決めた方法の不公平さを激しく指摘されると、くじがいちばん公平だと思った自分の浅はかさに気付き、ミッシェルに対して違う感情が芽生えてくる・・・・・・・・・・。
 結論をいうと、ミッシェルとマリ・クレールの夫婦は、強盗に入ったクリストフの弟たちを自分の家に引き取ることになるのだが、夫婦がそれぞれこどもたちの世話を見たいという気持ちを持ちながら、お互いにその気持ちを話すことなく、でも自然とそのようになっていくという過程がとてもいい。実の親でさえ、自分のこどもを虐待してときには死に至らしめる今の現実から見るとおとぎ話のように思えるが、おとぎ話にはさせない監督の才能というか力、信念がある。
 マルセイユの港を眺められる、ミッシェル夫婦の家の広いバルコニーや息子夫婦の家の庭・・・・・家族でバーベキューをしたり、ときに言い争いをしたりの場面がいきいきと描かれている。金持ちの家からも、貧しい人の家からも等しくマルセイユの港は見える。幼いクリストフの弟たちの世話のためにアパートに行ったミッシェルの妻、マリ・クレールが夜の港が眺められる部屋で、こどもたちとテレビの画面を見ているシーンは、心に残り、希望の光を感じさせてくれた。