ピラフの思い出

 朝方はまだ雨が降っていなかったので、愛犬レオの散歩前に大急ぎで、地植えのイングリッシュローズの剪定をした。横に広がった枝を思い切ってカットしたら、かなりコンパクトになった。
 お昼ごはんに、一口サイズに切ったチョリソーと、荒みじん切りにした赤色&緑色のピーマン、玉ねぎで炒めごはんを作った。チャーハンでもなく、ピラフでもなく、いためごはん。作りながら、20年以上も前、母と食べたピラフのことを思い出した。母は脳梗塞で倒れ数カ月入院した後、しばらく同じ病院に月に一度通院していたが、安定してからは近くの診療所に診察と薬の処方のため通うようになった。通院する時はたいていわたしが付き添っていた。その日も近くの診療所に一緒に行き、診察が終わった後、母がお昼ごはんを食べようと言った。診療所があるのは小さな商店街でそんなに食事ができる場所は多くないが、わたしの友人が手づくりのケーキをおさめていた喫茶店があったので、そこに入った。お客はわたしたち二人だった。母が何を注文したのかは覚えていないが、わたしはピラフを注文した。母は飲み物だけを注文したかもしれない。小さな店でカウンター席に座ったので、お店を切り盛りする女性が中で何をしているかがよく見える。アイスピックを持って、何かの塊を砕いている。え!という感じでよく見ると、凍ったピラフの塊だった。砕いてお皿に盛って、電子レンジでチーン。サラダとスープが付いていたかもしれないが、なんか興ざめな感じがした。だがいつもお昼ごはんをごちそうしてくれる母の手前、文句を言うこともできないし、もくもくと食べた。せっかく母がご馳走してくれたお昼ごはんなのに・・・・・・・。こんなかたちで食事を提供するこの店を責める気持ちもわいてきた。だが母には一言もそんなことは言わずに食べ終えて、店を出た。
 楽しいランチの思い出ではないが、これも母との大切な思い出だ。母がわたしのためにお昼ご飯をごちそうしたいという気持ちは、いつまでも残っているから。その気持ちこそがわたしにとって一番大事なものだから。