秋深まる


11月なのにこんな暖かい日が続いて、と思っているうちに、秋は一歩一歩、深まってきた。
近所の桜並木もつい最近まではまだ青々としていたのを記憶しているが、いつのまにか紅葉が始まっている。
秋から冬にかけて、毎年、目を楽しませてくれる近所の家のサザンカの花も気が付いたら満開である。
両親がどちらも冬の季節に他界したので、秋は衰え、消えていく命と重なりあい、以前に比べて秋の訪れが
しんみりと心に響くようになった。
所要があって、車で駅前の銀行に行ったら、ATMの前で待ってい伯父(母の弟)と偶然、会った。
先に用事をすましたので、近くで待ち、いっしょに銀行の外に出て、立ち話を少しだけした。
父の法要について伯父にそろそろ連絡を取ろうと思っていたので、
この偶然の出会いはラッキー!という感じだった。
向こうも気にかけていたようで、法要の大まかな日取りを話して別れた。
後になり、伯父は歩いて家に帰るので別れたが、わたしが車でなければいっしょに途中まで歩いたのに、と思った。
伯父の笑顔に母の面影を見たのである。母がいるときは似ていると思ったことは一度もないが、
いなくなると伯父の笑い方は母が笑う時の雰囲気にとても似ているように感じた。
伯父といっしょに秋の街を歩くなんて、もうないかもしれない。
そんな思いもよぎった。