サントリー美術館に葛飾北斎を見に行く

 六本木の東京ミッドタウン内にあるサントリー美術館では、6月12日まで「大英博物館  北斎」(国内の肉筆画の名品とともに)を開催している。だいぶ前から見に行こうと思いながら実現しなかった。  

 今日しかないとでかけた。サントリー美術館と言えばわたしのなかでは赤坂にあった当時の思い出が強くて、ミッドタウンに移ってから何回か訪れているのだがいっこうに上書き保存されない。どこかで昔のサントリー美術館が息づいている。  

  ここは現在、予約なしに自由に日時を決めて行くことができる。大きな美術館のなかでは珍しいところだ。コロナ禍でほとんどが事前予約を必要としているからだ。

 人数制限をしていないのでそこそこ混んでいて、入場は並んで待った。並んで待つことにややいらっとした。こころのよゆうが足りないのかも。気をつけよう。 

 館内は最初は列を作って、それものろのろとしか動かなくてイラッと(笑い)したがだんだん、列がほぐれて、見やすくなった。

 たいてい、どの展示会でも入り口近くは人が混みあい列を作ってがっかりすることが多い。だんだん展示物が多くなると人のかたまりがほぐれてくる。

 富岳三十六景の展示は人の列ができて、ゆっくりとすすむので、じっと我慢して鑑賞した。ときどき、まわりに人がいなくなる時があり、じっくりと北斎の版画絵と向き合うことができた。

 富岳三十六景のなかに一枚だけ、風景としての富士山でなく、富士山に登っているところを描いたものがある。だから富士山のあの姿はどこにもない。登っているそこが富士山だからだ。この発想の転換がおもしろい。

 北斎の肉筆画に描かれた鯉や鵜、鴨などの生きものの眼がすごいと思った。目力がある。こちらを見ているのだ。生きもののなかに人間がいるような、そんな目である。

 あと、百人一首の和歌を題材に描いた絵がおもしろかった。和歌に詠まれた内容をそのまま絵にしたのでは面白くないと、逆手に取ったり、着想をふくらましたり・・・・・北斎自身も楽しんで和歌から自分の世界(それは江戸時代の世界でもある)に引き寄せて描いている。強引なところもあって、ニヤリとさせられる絵も。

 かなり楽しめた北斎展だった。

 美術館をあとにして、昼食はミッドタウンの地下1Fでうどんを食べた。本場の讃岐うどんかどうかは知らないが、かけうどんの汁がとてもおいしい。アゴ出汁のようだ。

 ミッドタウンのなかにいたのでぜんぜん知らなかったが、外では猛烈が雷雨が降ったようだ。東京23区ぜんぶではないだろうがわたしが住んでいる同じ街に住む知人からラインだとすごい雨とのこと。

 家に帰ってくるとにわかに空が暗いくなり、風が強くなり、雨がまた降り始めた。荒れた天気の一日だったがわたしはほとんど無関係だった。