鷺草が咲いた

 朝から晴れた空には雲が浮かぶが、暑さをかきたてるような雲だ。秋の雲には涼し気な印象があるのに、なじ雲でも見る人の意識の持ち方でぜんぜん違う。

 熱帯夜で暑苦しいからだろうか。夜の眠りがじゅうぶんでなく、昼寝は毎日の必需品となった。

 一度エアコンを27度くらいに設呈してつけたまま眠ったが早朝早い時間(3時ころ)目を覚ましてしまい、それからは寝る前に消すことにしている。エアコンを使わなくても暑くて目を覚ますのではなく、だいたい5時間から5時間半で目を覚ましてしまう。6時間超は眠りたいので慢性的に満たされない感じだ。

 エアコンの効いた部屋で、書く作業をしたいと思ったがほとんどはかどらなかった。

 俵万智さんの歌集『未来のサイズ』は読み終えることができた。

 ある感慨がある。わたしが今いろいろ調べて書こうとしている歌人の永井陽子さんは、俵万智よりずっと前に同じ角川短歌賞に口語短歌で応募した。

 俵さんは角川短歌賞を受賞したが、永井陽子さんは候補作品だった。だが永井さんを押していた前川佐美雄が最終選考会に体調を崩して欠席し、そのことが選考結果にかなりの影響を及ぼしたのではないかと思われる。

 永田さんは候補になったのは第17回角川短歌賞だが、最終選考会の記録によると「選が終わっての感想」をそれぞれが述べているが、受賞作を本当にいいと思って選らんのだろうかと思うようなコメントを残している。ことばの切れ味がとても悪いのだ。

 永井陽子さんは角川短歌賞に応募したときは口語で新仮名遣いの短歌だったが、その後、文語・旧かな遣いの短歌に変わる。短歌で表現したかったことは変わっていないように思う。

 永田陽子さんは角川短歌賞候補になった作品のタイトルは「太陽の朝餉」で、俵万智さんの角川短歌賞受賞作は「八月の朝」である。どちらも朝だがかなり違う朝にちがいない。

 永田陽子さんが35歳の時に俵万智さんが角川短歌賞を受賞しているのだが、永田さんは俵さんの作品をどのように思ったのだろうか。ふとそんなことを思った。

 前年の34歳の永田陽子さんは短歌のシンポジウムに参加するなど、歌人として作歌活動だけでなく、文化的活動にも活発に参加していた。

 35歳となった12月、歌集『ふしぎな楽器』を世に問うている。ふしぎな楽器の短歌世界と、俵万智さんの短歌世界、これが同じ短歌かと思うほどだ。

 こうして俵万智さんの新しい歌集を読みながら、その後新しい歌集を出すことができなかった永田陽子さんを考えるとわたしはとても複雑な、そして寂しい心持になる。

 

 今日も昼食をとった後、昼寝をした。かなり深い眠りだった。ぽかりと水の中から浮き上がるように目が覚めた。え!わたしって眠っていたんだという、そんな感じ。

 起きて洗濯ものを取り込んでいると、スマホが短く鳴ったような気がした。しばらくしてスマホを見るとお昼前に電話をしたが出なかった友だちからのラインだった。あとで電話をするとのことだ。

 

この夏の鷺草の花羽ばたかずわたしの生き方悪いからかな

 

ふたつだけ羽ばたく鷺草 君と吾(あ)が咲いたと思うさびしくないね

 

老犬をわが家に迎えしその夏の鷺草白く羽ばたき歓迎せり

 

 

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こんな色のグラジオラスが咲いた

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さびしい限り、ふたつしか咲かない鷺草、老犬ももこがいた2015年は今まででいちばん鷺草の花がたくさん咲いた年で、思い出すと目がうるうるしてくる

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咲く花が少ないからその美しさがこころにしみてくる