午後に友だちが来てくれた

 朝は雨が降っていた。しとしとした雨で、庭木の葉っぱに雨粒が落ちて、ぽつんと雨が地面に落ちるような、目に見える雨だった。

 いつのまにか雨が止んだが、東京は梅雨入りとなった。例年よりおそい梅雨入りだがこれから雨の日が続くようだ。

 午後になり、先週約束した友だちが家に来た。家にいたのは1時間くらい。友だちのアドバイスでわたしが電話をする時間が長くて、友だちとそんなに話す時間がなかった。

 帰りは最寄り駅まで歩くと言うので、いっしょに駅まで行った。この友だちと駅まで歩くのは初めてだ。いつもだと途中で別れて、わたしは別の最寄り駅まで歩き、駅前の店で買い物をすることが多かった。

 わたしたちといっしょに下校中の生徒さんがおおぜい駅を目指して歩いた。家から駅までの道のりの真ん中くらいに私立の小中高校があり、ちょうど下校の時間だった。歩いているのは小学生か中学生か、よく見なかったのでわからない。

 友だちと駅前で別れ、わたしは別の最寄り駅まで歩いた。ひさしぶりに歩いたので歩くことがこころよい。先週末は疲れがたまって体を動かすのが億劫だったがやっと体が軽くなってきたと感じた。

 駅前の店で少し買い物をして、駅前のスターバックスに入った。友だちにラインを送った。家に来てくれてありがとうと。そんなに店に長くはいないで、小雨がぽつぽつ降り始めた街を家に帰った。

 家で友だちからのラインを見て、おや!と思った。いままで友だちは背景の映像はあるが、真ん中の小さな映像はなかったのになにか写真が使ってあった。

 クローズアップすると三つ揃えのスーツを着た男性の上半身の写真!えっ!先ほどの友だちだろうか!

 友だちのラインだから友だちの写真以外にあり得ないが、いつも見ている友だちとぜんぜんイメージが違って、この写真が現実ならわたしが見たと思い記憶しているイメージは何なのだろうと思った。

 現実(と思ったもの)と写真がこれほどギャップがあるのは生まれて初めての体験で、にわかに信じられないがなんとなくおもしろくなってきた。

 わたしが相手をこういう人と思っていることも、実は全く違っている可能性もあるわけで、人の付き合いはこういう面白さもあるものだなと思った。

 世の中に写真が良すぎて実物がそれほどではないというのはありがちだが、写真より実物がいい(とわたしは思っている)のは珍しいのではないか。

 友だちにはこのようなことはまったく伝えずに、写真に気づいて驚いたことを伝えた。友だちはいいほうに解釈してくれた。確かに仕事ができそうな雰囲気に撮ってあるが、わたしは友だちのそういう側面より違う側面を見ているのかもしれない。

 考えてみればわたしは実物の友だちと付き合うのであり、写真と付き合うわけではないから、わたしの目に友だちがどのように見えているかのほうが大事である。