2020年の大晦日

 ほとんどの時間を家で過ごした。いつもなら少しはやる家の掃除は一切しなかった。洗濯はしたけれど。

 正月用の料理はいくつか。昨日から漬け汁に漬けておいた豚肩ロースのかたまりをオーブンでこんがりと焼いた。800グラムほどの豚肉を2つにわけて、ひとつづつオーブンに入れて焼いた。一つに付き小一時間かかった。

 かたまりひとつ分の焼き豚を今日一日で食べてしまった。弟に少しおすそ分けをしたが。

 焼き豚を作りながら、黒豆を煮た。8年くらい前、柴犬レオがこの家にいるときインターネットで知った比較的簡単な黒豆の煮方をずっと続けている。鍋に6カップの水、大さじ2杯のしょうゆ、小さじ半分の塩、砂糖200グラムを入れて煮立てた中に、洗った黒豆と重曹小さじ半分を入れて3~4時間おく。その後、火にかけて煮たて灰汁をとったら弱火にして煮汁が半分になるまで3~4時間煮る。

 今年は大粒の黒豆を使い、とてもおいしく出来上がった。柴犬レオや老犬ももこがいた頃も同じように作ったレシピで黒豆を今年も煮ることができてよかった。

 どんな時間がたってもレオやももこと過ごした時間はわたしのなかで大切な時間。自分が死ぬ時がわかったら、レオやももこのことを思い出し、かけがけのない存在であることをあらためて思うだろう。レオやももこと過ごした時間はわたしの大切な宝物、決してその時間に戻ることがはできないがいつでもこころは戻ることができる。

 焼豚も黒豆も、いつも見ていなければいけない料理ではないので、ときどき台所に立ってそれ以外は永井陽子さんの全歌集を読んだ。

 今読んでいるのは永井陽子歌集『小さなヴァイオリンがほしくて』。平成12年1月26日に41歳で死去してから出版された本で遺稿集となる。若い頃の歌集を読み始めたのが10日ほど前だろうか。人生の長さに比して、歌集を読む時間の短さを思った。

 40年あまりの人生の時間の積み重ねから生まれた歌集を読むのはほんの短い時間でできるが、ほんとうに理解するためにはたくさんの時間がかかりそうな気がする。何回か、時間を置いて読んでわかってくるものもあるだろう。

 

長身をもてあましつつ語りくれたるインドの春の祭りのことを

 

わたくしの想いも知らずげに厚き天文年鑑などを買い来て

 

季節がひとめぐりするまでこころざしあたためてのち告げにぞゆかん

             永井陽子歌集『小さなヴァイオリンが欲しくて』

 

鴨居あるわが家の居間の出入りなど君の長身折りてなされつ

 

下草に隠さる父の鋸は2年を過ぎて錆びて現る