大田区文化祭短歌大会に行く

 朝方は夜から降っていた雨が残っていたが、すぐに止んで天気が回復した。

 昨日よりは気温が下がったがそんなに寒くない。

 コロナウィルスの感染拡大で、短歌会はほぼ中止になったがそのなかで大田区文化祭短歌大会が開かれた。

 会場は集まる人数に比して広く,ひとつの長テーブルの端に一名ずつ座るように設定されている。

 主催者は命がけで参加してくれたということばを数回口にした。それほどある程度の人数が集まる短歌会は全国的に中止に追い込まれているようだ。十人未満の小規模な歌会は開かれているようだが。

 最初に受賞した作品の講評が述べられ、次に会場に来ている人の参加作品の講評が行われた。

 講師は「コスモス」の選者で編集委員奥村晃作氏。短歌に対する考え方がとても明確で、わかりやすく参考になることが多く、様々な面で刺激を受けた。

 短歌の歴史のなかで現代短歌は、万葉集や古今・新古今和歌集、近代短歌のいわゆる伝統を踏まえた短歌に戻りつつあるとのこと。題詠が見直され、枕詞などの古典的なレトリックも大いに使って行きたいのが現代短歌の現状とのことだ。

 いわゆる前衛短歌ではなく、伝統的な短歌の現代版みたいなものか。

 わたしには前衛短歌に惹かれるところと、伝統的な短歌に魅かれるところ、矛盾と言えば矛盾だらけの短歌観を持っていて、どちらにも揺れて振れている。

 こんなわたしだが今日の短歌会での奥村氏のことばはとても示唆に満ち、これからのわたしの短歌の方向を指し示す含蓄があった。しばらく時間をとって奥村氏のことばを反芻し、かみ砕き、より意味を深めて理解していきたい。

 

今回の短歌大会に投稿したわたしの2首の短歌のうち、一首が橙黄賞を受賞した。この短歌大会の創始者である葛原妙子氏の歌集『橙黄』(おうとう)に因んだ賞である。比較的新しく作られた賞のようだ。

 

遠い日に君と座りしベンチにもフィジカル・ディスタンスの紙

 

 この短歌会の主催者も奥村氏も、下句の添削を勧めてくれた。

 

遠い日に君と座りしベンチにもフィジカル・ディスタンスの紙はられあり

 

 歌会を終え、昔の蕎麦屋をそのままカフェにしている店に足を運んだ。この店は短歌に通じて知り合った人とよく短歌会の帰りに寄った店だが、今日はひとりで立ち寄った。短歌会の会場で買った奥村氏の歌集を読みながら、入れたての珈琲とチョコチップ入りのマフィンを味わった。

 

昨夜の雨葉のなき枝にしずくとなり冬に入りゆく桃の木きらめく

 

池上の街に迷へば若き女(をみな)ともに歩いて道教えくれる