白梅の花、蝋梅の花

 朝の冷え込みは厳しく、花壇の土は霜で盛り上がり、植えてあるビオラや自分の力で増えた忘れな草の葉っぱが萎れている。まだ育っていない小苗は霜柱で根が持ち上げられ、青息吐息だ。ただ目高が棲んでいる水瓶は凍らずにすんでいる。
 それでも地中で何を察知したのか、遅咲きのクロッカスの芽が地面から薄緑色の先端をのぞかせている。早咲きのクロッカスは細い葉を地中から伸ばし、その中につぼみを守っている。
 この庭で二番目に咲く白梅も花数が増えてきた。日当たりがよくないのであまり花を期待していなかった蝋梅もこの木にしては花の数が多くなった。まだ
 まだ寒の最中だが花たちは日の光が強くなり、陽の出る時間が長くなるのを感じ取っている。
 昨年、病院で食事指導を受けたため、いちおう糖質や脂質をコントロールした食事をしている。今日の午後はいただき物のカステラを持参して近所の家でお茶をごちそうになった。甘いものでもみんなで食べれば食べ過ぎることはないだろうと思ってのこと。
 だが誘った友だちの遠い親戚の方が東京都の島嶼部に住んでおられて、伊勢海老漁に出かけ、何が起こったかはまだわからないが事故死されたという一報がお昼前に来たとのこと。わたしがこのことを知らされたのはお茶がすんでからだ。
 この話を聞いて10年前のやはり冬のこと、父の郷里に住む従兄が猪狩りに出かけ、雪深い山の崖から転落して亡くなったことを思い出した。

 山手線をはさみ病院と美術館が向かひあふことはじめて知りぬ

 睦月半ば日記に記す西暦をたがふことなく身に慣れはじむ

 寝釈迦仏のごと片ひじつきつつ妄想しおり美しい飛躍

 死にし人や犬ひょいと現れることあらむか寒の日なれど

 冬の陽をたっぷり吸ひしベッド包まれるごと眠るらむわが犬は

 父植ゑし蝋梅の花あまた咲くまで十数年かかりたり

 言いかけた口そのままに蝋梅のうす黄色の花咲いており

 ひめごとをささやくやうに蝋梅の花香りたり顔を寄せれば

 

梅の花にはいくつもの思い出が・・・・・
柴犬レオがいた冬、蝋梅の黄色く光るつぼみを見て驚いた
この木が蝋梅だとは夢にも思っていなかったから
ただ、父が植えた何だか分からない木と思っていた
その木が歳月をかけてわたしの前に蝋梅として現れた、そんな感じ

この梅も父が植えたものだが、父が亡くなって後たくさんの花を咲かせるようになった
そういう木が何本もあってわたしはうれしいような哀しいような複雑な気持ちになる