歌を詠んだり花を眺めたり

 風もなく穏やかで春の訪れを実感する一日。庭の花たちの時間も進み、終わりかけている花、咲き始めた花、盛りを迎えようとしている花が舞台の上の俳優のように見るものに訴えかける。
 近所の友人の家に持って行こうと思い、盛りを過ぎたがまだ美しい乙女椿を高枝鋏で切った。三枝ほど。自宅用に一枝ほしいと思い切ろうとしたとき、女の人が通りかかり、「お花がきれいですね」と声をかけてくれた。庭に入っていただき花壇で咲く忘れな草水仙、ヒヤシンスなど、ツツジの植込みの下に群れ咲く叡山菫を見てもらった。ごく薄い赤紫を帯びた菫をとても気に入ってくれ、また見に来たいと言った。その方に乙女椿を一枝さしあげた。水彩画を書かれれるそうで絵にしたいと言った。

 庭先の乙女椿のひと枝を若き日の母に手渡したきに
 乙女椿 花落ちし後も庭土にうす紅色の光流せり
 つつじの木下に群れ咲く菫草 楚々としてたくましき花
 乙女椿 落花して光つかの間を放ち庭を明るくしたり
 雨に落つ乙女椿はつやめきてうす紅色の光源となり
 ムスカリの三角帽子は青紫 春の花壇で群れ遊ぶ

 昨日の歌会で出された「花」という当座をじゅうぶんに表現しきれなかったことが引っ掛かり、今日もいくつかの歌を詠んでみた。こんなに花に囲まれて暮しているのになぜ花を詠めなかったのだろうと自省した。

 夕方近くになり、道路に面した駐車場に置いたプランターに水やりをしていると老犬ももこの友だち犬が通りかかった。友だち犬に待ってもらって、家に入り寝ているももこを起こして外に出した。ちょっと可哀そうと思ったがいつもなら散歩に行く時間なので。道路に出たももこはすぐ用をたしたが、あまり歩きたい様子ではない。友だち犬と飼い主さんと家の前を行ったり来たりした。どちらも、ももこに付き合ってくれて有り難い。老犬同士、短い時間でもいっしょにいることでいつもひとりのももこの気持ちが元気になるといいと思っている。

いつの間にか青紫色のムスカリが咲きそろった

駐車場横に置いたプランターでは色とりどりのチューリップが花開いた

5月頃花が咲くクレマチス
濃い紫色の花が咲く

こちらもクレマチスだが大輪の青紫色の花が咲く