陽射しが強く気温が上がった昨日、上野の東京国立博物館平成館に「東寺 空海と仏曼荼羅」を観に行った。
お昼過ぎにでかけたのはよくなかった。陽射しの強い中、最寄り駅まで歩くのが大変だったし、展示会はなぜかお昼過ぎがいちばん混み合う。
待ち時間は20分で思ったより短く思ったが展示会場は混み合っていた。
見どころ満載で、しかもじっくりと鑑賞したので時間がかかった。
密教はどちらかと言うと、個人の救済より国家の救済をめざしているようにも思えた。密教において最重要な後七日御修法(ごしちにちみしほ)は大がかりな法要みたいなもので、道具立てが凝っていて絢爛でさえある。
壁にかけて御修法の道具立てのひとつとなる両甲斐曼荼羅が表わす世界観に心惹かれるし、如来や菩薩、明王、天など多彩な仏像も魅力的だ。
密教の教法は視覚に訴えて伝えるという考え方なので、目に入るものすべてが仏の教えへと導くようにできている。視覚的に訴えるものが多いので、展示会にふさわしいともいえる。
空海が最澄に宛てた何通かの手紙は国宝となっているが、これが弘法も筆のあやまりと言われた方の墨筆かと時間をかけて鑑賞した。くせの少ないバランスがとれた、しかも自由でのびやか、気品のある筆致に惚れ惚れとした。
いちばんの見どころは第4章の「曼荼羅の世界」で、広い展示会場にさまざまな菩薩坐像、如来坐像、明王立像、天立像が立体曼荼羅となって展示されている。
国宝は十一象あり、いくら時間をかけても見飽きないほど。
菩薩坐像はいずれも笑みをうかべた温和なお顔であられるが、金剛業菩薩坐像のお顔は見知った人とどこかに似ていて目が釘付けになった。
数本の腕を持ち、顔も複数を持つものが多い明王立像は異形ながら迫力があり、目が吸い寄せられる。異教との対立や争いを経て、融合するかたちで明王像が生まれたと解説にある。
いちばん美形の顔をお持ちなのが帝釈天騎象像で、象にまたがる凛々しいお姿を目に焼き付けた。これもインドの異教の影響を受けて生まれたとのこと。この像だけが写真撮影可なので、いくつかのショットを撮った。
四体の菩薩その笑みの趣が異なり知人に似る一体あり
国立博物館を後にして、国立科学博物館で無料(シルバー料金)の写真展を観た。プラントハンター、ロバート・ウィルソンが約百年前に撮影した東京や沖縄、屋久島などの写真が展示されている。